夢を描く

今年度教えていた高校2年生のあるクラスが、期末試験で揃いも揃ってよい成績だったものですから、前回の授業ではご褒美に百人一首の札取りをしました。

大概こんな場合は大喜びするものなのですが、何だか様子がおかしいのです。

ほとんどの生徒が、周囲をうかがうような冷めた目をしているのです。私の最も苦手な雰囲気です。

ワイワイ賑やかなのは気をひきたい場合が多いので、かえってコミュニケーションが成り立ちます。

悪さをしてくれたなら、怒ることで距離を近づけることができます。

ところが、静かでいて心を開いてない状態というのは難しいのですね。

 

「何があったの?」と聞いてみました。

「成績がよくたってクラスがこんな人を信じない雰囲気じゃ、いいとはいえないんじゃないかな?」と疑問を投げかけてみました。

すると不思議。

「うるさいなぁ」という反応が返ってくるかと思いきや、「よく気づいてくれたぁ」とたくさんの目が語りかけてきたのです。

しかも授業が終わったあとに、本音を語りに何人かの生徒が集まってきました。

そのクラスでの私の授業は、週にたった1回なのですが、残りわずかな時間で何ができるか集まってきた生徒と考えてみました。が、答えは出ません。

今日までの1週間の間に廊下ですれ違う生徒たちも、何か話したそうです。クラスに問題がある、これではよくないと感じているのです。

彼女たちの言い分はこうです。「一部の子の発言が勢いがあって強いから、ほかの子が委縮して何も言えない」

 

どこの世界も同じです。大きな声で強い口調で発言するひとの意見がその場を牛耳ってしまう、という傾向・・・大きな声の生徒は悪気はほとんどないのですが・・・むしろとっつきやすいんですけれど・・・

 

そこで、全員が等しく考えを言うにはどうしようと考えた末に、今日はそれぞれの生徒に自分と向き合ってもらうことにしました。

自分てどんな人間か一度向き合ってみよう、どんな人になりたいの?どんな夢を持っているの?というところから、「夢を描こう」という流れになりました。

すると、驚くほどステキな夢をほぼ全員が描いてくれました。

今日は、その中から一部、本人の同意もいただいて紹介致します。

 

・まず4年制の大学で、保育士になる資格を取る。ほかにもたくさんの資格を取得して、保育施設を作りたい。待機児童を減らすことに取り組みたい。

・次に人のために動ける人になって、地元を活気づけるために活動して稼ぎたい。稼いだお金でみんなの医療費をもう少し安くできるように働きかけたい。

・もらったお金で世界中にいる貧困で悩んでいる人の手助けをしたい。

・雇用を増やして貧富の差を減らし、さらにお金のめぐりをよくして差をなくしていきたい。

・心に余裕を作って、もっと他人に優しくしたい。親孝行もしたい。

・長生きする。そして死ぬ前に笑える思い出をたくさん思い出せるような人生を送りたい。〈ここまで全部K・Kさん〉

 

・プロのサックス奏者になる。

・歌うパン屋さんにもなりたい。

・猫に囲まれて生活したい。

・自分にも人にも嘘をつかない大人になりたい。

・笑顔が素敵でみんなに愛されるおばあちゃんになりたい。

・何かを見たり聞いたり読んだりした時の感動を忘れずに大人になりたい。

・アコギ(アコースティックギター)一つ持って色んなライブハウスで歌うシンガーソングライターにもなりたい。

・優しくて素の自分を受け入れてくれる人と結婚したい。

・いつまでも家族や友達を大切にしたい。

・ポジティブで可愛い女性になりたい。

・お花屋さんで働いて「看板娘」と呼ばれたい。

・20才になる前に外国に行きたい。

・でもでもやっぱり、プロの演奏家になりたい‼〈A・Kさん〉

 

・資格をたくさん取って、将来仕事がなくならないようにしたい。

・美容の仕事に就きたいから、説得力があるように自分もキレイになる。できるだけ自分の力で頑張るけど、目だけは二重に整形。

・お客さんのことを考えてくれる美容師さんに会った経験から、私も相手の立場に立って考えて、美しく仕上げてあげられるような人になりたい。

・もし将来子どもができたら、すっごく優しくして、私とは違う勉強のできる子にしてあげたい。私はできないことが多いから、子どもにはやりたいことをやらせてあげたいし、力になってあげたい。英会話は絶対に習わせる、損はないから。

・お母さんには最高の恩返しをしたい。どこの子もそう思っていると思うけど、とんでもなく迷惑をかけているから、「これやりたいな」って言ったら、私が全面的に協力してお返ししてあげたい。

・大人になって「幸せだな」って思えるように生きたい。〈Y・Sさん〉

 

まだまだたくさんあります。

結構、いまどきの高校生って純粋でしょ?

 

本日もおつきあいいただきましてありがとうございました。