文才神(文昌貴神)を持つひと

熊本を中心とする地震、心が痛みます。こんなとき、いつも無力を感じます。何か起こってから、あの時はこのような象意が出ていたというのではなく、あらかじめ何かできないものか・・・

平安の昔、陰陽寮という役所がありました。陰陽師が活躍していた時代のことです。この四柱推命の学問をもっと生かしていけたらと思います。これからの人生の課題にしていくにはあまりに大きすぎるかもしれませんが、ひそかに考えていることです。

 

今日は、文才神またの名を文昌貴神を持つひとについてお話ししたいと思います。

同僚の社会科の先生で、長崎に被爆者の証言を聴きとりに通っている方がいます。ご自身もカトリックの学校で育ったからでしょうか、隠れキリシタンのことも調査研究されていて、長崎への強い思いを持ってらっしゃいます。

昨年は広島で被爆された戦争体験者の方を学校に招いて貴重なお話をうかがう機会を設けるなど、平和への思いを強く持つだけでなく、実際に企画立案し実現する行動力がすばらしいと思います。

彼女は強い「甲(きのえ)」を持つ人ですので、その行動は単なる思いつきではなくしっかりした裏付けと「甲」らしい「仁」にもとづいているのかなと私は確信しています。また、もともとの命式の中に「学禄神」という吉神を持ってらっしゃる方なので、「学問芸術への造詣深く、勉学・研究で発達する」という特性を発揮されているのです。

誰でも10年ごとに変わっていく大運というものがあります。つまり期間限定で、吉の作用や凶の作用が現れる運気を大運と呼ぶのです。この大運というものにより運気は変化していきます。またもっと正確に見る場合は、波運(はうん)といって、その年、その月、その日、その時間により時々刻々と変化していく運気もみていかねばなりません。西洋占星術のホロスコープがどんどん変化していくのと同じことかと思います。

さて、単なる理論だけでなく、実際に行動して「平和」とか「生きていく」ことを問いかけていく彼女には、いま大運で「文才神(文昌貴神)」がついています。文字通り文章を書くのにプラスに働いてくれる吉神です。彼女の願いは、傾倒している作家遠藤周作の作品の一つ「女の一生」の続きを書くことなのだそうですが、強い精神力と文才神のパワーとでかたちにされるのではないかと思っています。

お笑い芸人でありつつ昨年「火花」という小説で芥川賞を受賞した「ピースの又吉」こと又吉直樹氏には、この文才神が命式の中にしっかりあります。彼はなかなか強い運勢の人です。

1980年6月2日生まれですので、年・月・日の順に庚申・辛巳・丙午という三柱を持ってらっしゃいます。わかりやすいように縦書きに直してみます。

年 庚申(かのえさる)〈刑・破・孤虫 転旅〉【月徳神・徳禄神・文才神・財禄神】

月 辛巳(かのとみ)〈刑・破・劫刃・亡刃〉【天徳神・調和神・威禄神・衣食神・貴格神】

日 午(ひのえうま)〈冲・羊刃・法刃〉【天合神】

最初に見るのは日干です。彼の場合は「丙(ひのえ)」です。太陽の「火」は日支の「午(うま)」によって旺盛な燃え盛る「火」となって強いです。この組み合わせは「羊刃(ようじん)」となり、行き過ぎてしまう恐れがある程強いと言えます。

さらに月支の「巳(み)」も「火」をあらわすため「火」のパワーはなかなかに強いと言えます。つまり相当に強い自分をお持ちの方だと言えます。

全体的には、〈 〉の中が凶の働きをもたらすと言われるもの、【 】の中が吉の働きをするものです。実は、この吉神や凶神だけ単独でその人を語ることはあまりしません。あくまでも「干」と「支」を中心に判断し、そのほかはプラスアルファで見ていきます。

とはいうものの命式内にこれだけの吉神を持つ人は、それだけ恵まれたものを持っていると言えると思います。彼の場合は年の柱に「文才神」を持っています。文学を愛好して、物書きになって、とうとう芥川賞までとってしまった彼をバックアップしていたと言えるでしょう。

故郷を離れるとされる「転旅(てんりょ)」の凶神も、勢いが強い場合は臨機応変の才あり、社会的に名声をあげるという意味にもとれるのです。また役所関係の問題を意味する「法刃(ほうじん)」も出不精や引っ込み思案と解釈できます。

今現在又吉氏は35歳(6月2日の誕生日で36歳)です。

31歳~41歳の大運では「乙酉(きのととり)」が巡っていますので、〈色虫・隔虫〉【大成神・品位神】がついています。

また昨年は「乙未(きのとひつじ)」の年でしたから、〈流虫〉【月合神・温禄神】がついています。

これらも彼にとってはラッキーに働いています。

命式内の「天徳神」は同じく命式内の「天合神」と組み合わさって働きが強化されます。祖先の遺徳や余慶を意味します。つまりご先祖の行った良いことがかたちとして現れるということだと理解しています。

そして命式内の「月徳神」は昨年限定で巡っている「月合神」によりその働きが強まっています。これもまた祖先の余慶です。ご先祖で人助けなどなさった方がきっといらしたに違いありません。

大運で巡っているうちでは「大成神」は「天徳貴神」、「品位神」は「天乙貴神」と呼ばれ、特に「品位神」は最高位の吉神です。又吉氏の月の柱の勢いは「建」ですので、「実直にして文学の思想高く文筆家として君子の風格あり」ということがあてはまりそうです。

波運の「温禄神」は自ら道を打開するもので「金与禄」とも呼ばれるものです。

大阪から東京に出てきて住んだ三鷹市下連雀家の住所をもしやと図書館で調べたら、かつて太宰治が住んだ家の住所と一致したというのも偶然というにはあまりに不思議なことです。又吉氏は携帯の待ち受けに太宰治にしている程のファンですから、自分で招き寄せたのかもしれませんね。

ひとりでぶらっとお寺や神社に参拝するのが趣味らしいのですが、見えない力が複合的に働いて応援しているのかもしれないなあとも思います。

ひとつ気をつけていただきたいのが、今現在巡っている「乙(きのと)」が命式内の「庚(かのえ)」と干合していること。また41歳から51歳までの10年間に巡る「丙戌(ひのえいぬ)」の「丙(ひのえ)」と命式内の「辛(かのと)」が干合することです。「干合」とは仲良しの「干」がくっつくので、若い人は結婚という意味もありますが、「劫刃(ごうじん)」が命式内にある人は特に注意が必要となります。

「劫刃干合(ごうじんかんごう)」と言って、外から地位・名誉などが奪われることの暗示です。彼の場合、吉神が守ってくれると願いたいです。

 

「古畑任三郎」で人気を不動のものにした三谷幸喜氏は今NHKの大河ドラマ「真田丸」をてがげてますが、彼にもまた文才神がついています。田村正和の独特なスタイルが、かつて刑事コロンボに親しんだ世代には懐かしく、若い世代には新鮮なものとして受け入れられ、幅広い層のファンを獲得した番組となりました。「古畑任三郎ファイナル」が放送された時は視聴率が20%を超えたそうです。

2000年に上演されたミュージカル「オケピ!」では岸田國士戯曲賞を受賞しました。これは、演劇界の芥川賞と呼ばれるほど、価値のある賞なのだそうです。

 

今日は、「文才神」を中心に説明させていただきました。ややこしい命式の読み取り方に最後までお付き合いいただきありがとうございました。