臨機応変のわざ

暑い一日でしたね。お変わりございませんでしょうか。

今日は私は、義母の通うケアセンターにて、先生を含む仲間6名と二胡の演奏をさせていただきました。

1時間という時間をいただいたので、「夏」をテーマに日本と中国のそれぞれの海や川にまつわる曲をまず初めに演奏しました。

「月亮代表我的心」というかつてテレサテンが歌って一世を風靡した曲、「南の花嫁さん」というタイトルで高峰三枝子がヒットさせた元の歌「彩雲追月」という曲なども喜んでいただけました。

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仲間の協力もさることながら、先生の臨機応変のわざには学ぶところがたくさんありました。

日本国内あちこちで二胡のご指導や演奏活動、また本場中国への演奏旅行も何度も経験されているだけあって、どこで何があっても全く動じないところがスゴイのです。

途中で私の二胡の音が狂ってしまいました。司会のために、楽器とマイクを交互に持ち替え、音源も調節したりと、チカラ以上のことをやっていたために、肝腎の楽器の弦が緩んでしまったのでした。私の二胡から調子っぱずれな音がするのをすぐさま気づいて下さった先生は、さっとご自分の二胡を私に渡して下さり、その間に演奏しながら私の二胡の調弦をして下さり、しかもそれを何事もなかったようにさらっとなさるところが見事なのでした。

途中の休みをはさんで「いったん控室に」というときも、先生はいくつかのテーブルをまわってケアセンターに通う皆さんと会話を楽しんでいらっしゃいました。

 

先生がすごいので、そこに集まる仲間も皆ユニークな人たちばかりです。

日中の架け橋となっているHさんもメンバーのひとりです。彼は大学の先生で、今日はオープンキャンパスのために参加できなかったのですが、朝応援メールをくださるなどその心遣いがステキです。

リーダーのSさんは小学校の図工の先生なので、イラストとユーモアあふれるトークで場を盛り上げてくれます。軽妙なトークは笑いを起こします。

せっかく先生もいらしたので、ソロの演奏のコーナーも設けました。「何がいいかしら?」と、広いレパートリーの中からいくつか候補をしぼっていらしたようなのですが、実際にはその場で「丘を越えていこうよ」などの懐かしのメロディを選ばれたのでした。

休憩の間にお年寄りの間をまわってお話することで、どんな曲を皆さんがお好みなのか聞いてらしたというわけです。粋なはからいだなと一同感心してしまったのでした。そして楽譜なく歌にあわせて音程も自由に伴奏されるところもさすがだなと思いました。

さらにアンコールのときには、「あらピアノがあるのね」とおっしゃって、これまたさらっと伴奏をつけてくださり、会場が喜ぶことを第一になさる姿からたくさんのことを学んだのでした。ご自分のスゴさを見せつけるのではなく、柔軟に相手の求めるものを提供する。これってかつて世阿弥もめざした姿ですね。

「Amazing Grace」もみんなで演奏したのですが、この曲は神の不思議な働きをたたえる歌らしいです。きっと義母の通うこのケアセンターにはよい「気」が満ち溢れているんだなと私は確信しています。

 

会場を盛り上げて下さるのはそこのスタッフの皆さんです。ふだん義母の送迎のときや相談事のときに言葉やノートで会話をしているのですが、その優しく親身に接してくださる顔とはまた違う、華やかな明るさに感動しました。

どうしても気の晴れない利用者の方たちや気持ちをうまく伝えられなくなっている方たちと日頃接しているから、その場を明るく元気にさせることはお手の物なのでしょう。介護職の方たちの高い能力と心意気に「プロはすごいなぁ」と思ってしまいました。

私たちをそれぞれの最寄り駅まで送り迎えして下さったKさんとはいつもと違うお話ができましたが、やはり感心することばかりでした。臨機応変に対応しなければならないことばかりの毎日だけれども、そこに「やりがい」や「魅力」を感じるとおっしゃるのです。そしてそこで働く皆さん全てがそのような心持ちであるのがわかりました。

臨機応変というわざは、頭も心もどちらも柔軟に使う高度なものです。今日は私たちの二胡の先生、そして介護職の方たちから、大切なことを教わりました。

互いの「気」遣いで、この世界によい「気」を満たしていきたいですね。

 

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リーダー平井忍さんが描いて下さったイラストです。美化してくれました。

本日もおつきあいいただきましてありがとうございました。深く感謝いたします。