面と向かわないよさ

金曜日に、娘くらいの年齢の若い同僚Aさんとお茶した時に、何故かふと二十年以上前に生徒だった子のことがしきりと心にひっかかり話題にしていました。すると翌日の土曜日、その生徒だった子(といっても今はもう立派な大人です)から本と手紙が送られてきました。ああこういうことだったんだと思った次第です。

前回Aさんに誘われてお茶した時は、その帰り道に、会いたいなと思っていた人にばったり会えました。人と人との出会いって、本当に仕組まれたもののように感じることがよくあります。

ここ2,3日、パソコンの文字変換がうまくいかず、自分で色々やってみたものの埒があかずに今日電気屋さんに持ち込みました。どういうわけか電気屋さんでパソコンを開いたら直っていました。あら不思議。前もって電話でも相談して私が困っていたのを知っていた電気屋さんも「こんなことはあり得ない」と驚いていました。

その電気屋さんから出て数歩歩いたところで、息子の幼稚園時代のママ友A子さんとばったり会いました。目のくりくりっとした彼女は今もかわいらしい雰囲気を保っていましたが、それぞれの子どもたちはいつの間にか成長しているわけで、あらためて年月の経過を思ったのでした。

息子が通っていた幼稚園は、プロテスタント系の自由な空気の幼稚園で、毎日のお食事はお祈りをしてからいただくという習慣のあるところでした。制服もなく、「明日は水筒とシートを持たせてください」という連絡がしょっちゅうある、いわば毎日が遠足みたいな幼稚園でした。泥んこOK、わんぱく歓迎ののびのびした雰囲気が息子にはあっていました。

サッカーによって心も身体も育てるという方針もあり、幼稚園を卒園後もサッカーでのつながりはずっと続き、中学生になるまで面倒をみてくれるシステムがありました。地元では結構知られている強いチームでもあり、ママもパパも試合の応援を通して仲良くさせていただいてました。

A子さんもその頃まだ抱っこが必要な下の子のお世話もしながら、試合の応援も熱心になさっていたので、えらいなあと思っていました。小さな子を時には炎天下の、時には小雨も降るグラウンドに連れてくるというのは大変なことです。頑張り屋さんのA子さんだからできることだなぁと感心していたものです。

そのA子さんと久しぶりに会ってしばし立ち話ができて、楽しいひとときを過ごすことができました。その中で、「男の子ってホント何をしでかすかわからないね」というのが、一致した見解です。女の子とは違う世界の生き物なのですね。だから面白いこともいっぱいありますが、学校から呼び出されるなんてことも何度か経験して、私たち男の子の母親は鍛えられるのです。

さて、大学入学を機会に独立してもらった息子とは、引っ越しの荷物運び込みの時に、高校3年間のぶっちゃけ話を聞くことができました。この3年間何か聞いても「うん」とか「いや、違う」とか短い言葉の応酬がやっとだったのが、どういう風の吹き回しか、こんなに喋るんだというくらいに友だちのことや家族への思いなど語ってくれたのです。

引っ越しは二度にわたって行いました。私が参加した日は、夫が運転するレンタル軽トラックの後ろを、私が息子を助手席に乗せて運転してついていくという形をとりました。息子と私は、お互い顔を見合わせないことがよかったのだと思います。つまり「面と向かわない」ことの気楽さから自然と話をする気になったように思うのです。

我が家では、歩くと10分ちょっとの駅までの道の送り迎えを「頼まれたら拒まないことにしよう」という暗黙の決まり事があります。家族全員揃った場では語らないことも、1対1だとふと話してくれることもあるからです。うまくいくことばかりでもありませんが、クルマという個室のよさと、お互い同じ方向を向いている心地よさで、本音が口をついて出てくることもあるのかなと感じております。

照れくさくて言えない言葉、なかなか言い出しにくい失敗談、喉もとまで出てきている感謝の言葉など、「面と向かわない」ことで素直に言えたりするかもしれません。

夕方、A子さんからLINEでメッセージをいただきました。「なんか引き寄せられたよう」に私と会ってしまったという内容でした。まっすぐにひたむきに生きているA子さんと再び出会う日も近そうです。