魁ごうの詩人・学者~藤井貞和先生

この夏、母校の大学で松岡榮志先生の講座で勉強したおかげで、今日は長い時を経て夢のような再会を果たすことができました。松岡先生は、日本を代表する中国文学及び中国語の研究家で、辞書作り・翻訳・教育と多岐にわたってご活躍なさっている先生で、日本と中国の文化交流に貢献されています。大学時代に仲良くしていた友人が、松岡先生の魅力に憑りつかれて中国に渡り、その後中国の方を夫として、今は三田にある大学で教えながらさらなる研究活動をしています。

正確には、「しています」ではなく、「しているそうです」です。大学卒業以音信不通となっていたのを、この夏の松岡先生との出会いで知り得たことだからです。きっと近いうちにその友人とも会うことになりそうです。そんな気がします。

 

さて、その勉強会の時に、嬉しいお知らせがもう一つありました。松岡先生の文化サロンに、嗚呼あの藤井貞和先生がお見えになるというのです‼

それが今日この日でした。

松岡先生が翻訳された「詩経」を藤井先生が日本文学の「歌」や「詩」から読み解き、その後松岡先生による翻訳秘話が語られ、さらにはお二人の特別対談・・・とかなりスペシャルな内容のサロンなのでした。紙の上だけの研究でなく、「森へ行き、声を聞き、宝ものを見る」というのが松岡先生の方法です。

一方藤井先生は言語・文化は民族移動と共に伝わった、言葉には翼がありアジア全域の広がりを持つというものだと理解しました。どちらも素敵でわくわくする内容です。藤井先生といえば、「源氏物語の始原と現在」で「書くことによる鎮魂」「物語の至上命令」などの画期的かつ普遍的なメッセージを発信された方です。

その藤井先生、魔力を持った方です。その魔力に魂を奪われた学生は、軒並み風貌やしぐさまで自然と似てしまうという不思議な現象をかつて引き起こしていました。

あれから長い時を経て今日再会を果たして、人は簡単に時空を超えることができるんだということを実感しました。藤井先生の、モノやコトに魂を感じているとしか思えない語りや、熱のこもった時に小刻みに左手を上下に振る動きなど、私が学生だった時と寸分も変わってなかったからです。

天才と呼ばれる人というのは、いやが応でも、瞬時に何かとつながってしまうタイプの人なのかもしれません。だから常人を越えた発想、ひらめきをするわけで、藤井先生の魔力はそこにあるのだと今日確信しました。

「縁って、あまり何も考えなくてもつながるようになっているのかも」で終わる吉本ばななさんのコラム(毎日新聞の日曜版「毎日っていいな 46 ご縁」)を今朝読んで、「わかるわかる!」と思っていたのですが、今日の藤井先生との再会でその思いを新たにしました。

そのばななさんのコラムというのは、20代後半目白に住んでいた時にほぼ毎日通っていたカフェの話です。そこのマスターはこだわりの珈琲を淹れる人、彼のお姉さまがていねいに作るケーキと共にばななさんは色々な時をそこで過ごしていたそうです。

目白を引っ越してほどなくお店はなくなり…あるときたまたま軽井沢でそのお店と出会ったのですって。しばらくして仕事で軽井沢に行ったとき、少しの時間ができた。編集者さんに「どこか行きたいところは?」と聞かれて例のカフェの名を告げたら、何とその編集者さんのおじさんの店であることが判明した、というのです。

忙しいばななさんのことです。しょっちゅう軽井沢に行くわけでもなく、その企画が軽井沢だったのもたまたまで、その時たまたま編集者さんに「行きたいところは?」と聞かれなければお店の名を出さないままで終わっていたわけですね。たまたまがいくつか重なるとんでもなく低い可能性であるけれども、きちんと用意されていた。そこで先程の感想が生きてくるのです。「縁って、あまり考えなくてもつながるようになっているのかも」

そして私はばななさんのこのコメントに全力で「YES‼」と賛同したいと思います。ばななさんには偉大なお父様の見守りがきっとあるはずです。

そのお父様は言わずと知れた「共同幻想論」などで一世を風靡した吉本隆明氏ですが、今日お会いした藤井先生とも大いなる接点がある方です。対談・共著もなさり、同じ詩人としても私などが計り知ることのできないご関係がおありと思います。藤井先生と吉本隆明、これまた「ご縁」ではないでしょうか。

 

ラッキーなことに、ちょうど母校に到着したときにタクシーから降りられた紳士がいました。もしやと思ったらまぎれもない藤井先生でした。

そして帰り道もずっとご一緒できたのでした。今朝義母をお風呂に入れてあげたご褒美だなと思いました。かつて先生が私の言ったことが面白いと当時携わってらした地方新聞のコラムに「ゼミの美也子さんという学生が・・・」と書いて下さったことがありました。先生にとっては百万分の一くらいのことに過ぎないことですが、私にとっては宝物のような思い出です。

先生にそれをお話したら、うっすら「そんなことがあったような・・・」と幻想のような反応でしたが、そんな思い出話につきあって下さった優しさに感謝です。

大学生の当時毎週火曜の夜に集まる「歌謡ゼミ」という、主に古事記や日本書記の歌について自由に語る会があり、私はただ藤井先生の魔力に引っ張られて参加していました。

その日本書紀の歌謡の中に「檀(まゆみ)」の木を伐ろうとするのだけれど、その木を見ると恋しい人を思い出すのでとうとう伐ることができなかったという歌があります。その歌からムンクの絵(木と人が一体となっているもの、確か)を思ったという私の拙い感想を、先生は面白いと取り上げて下さったのでした。

さてブログに先生との再会のことを書いてもいいよと許可をいただきましたが、パズルの一コマとしての先生の姿しか知らなかったことに気付き、インターネットで「藤井貞和」を検索しましたところ、先生が「魁ごう」のお生まれだということがわかってしまいました。「庚戌(かのえいぬ)」の魁ごうの方です。衆人に秀でるわけがわかりました。

最後に今をときめく魁ごうの美女たちをご紹介したいと思います。松岡先生のサロンに美女が多かったことをちょっぴりうらやむ藤井先生に私からのプレゼントです。

魔性の香り漂う人のなんと多いことか・・・

松たか子  1977年6月10日 戊戌(つちのえいぬ)

安室奈美恵 1977年9月20日 庚辰(かのえたつ)

広末涼子  1980年7月18日 壬辰(みずのえたつ)

壇蜜    1980年12月3日 庚戌(かのえいぬ)

北川景子  1986年8月22日 戊戌(つちのえいぬ)

この世は不思議〈wonder〉に満ち溢れていますね。あなたのまわりもです。気づくか気づかずにいるかそれだけのことだと思います。

本日もおつきあいいただきましてありがとうございました。