十干vs十干 庚(かのえ)との相性~伊坂幸太郎(作家)・梶田隆章さん(ノーベル物理学賞)

仙台に住む友人から満開になった桜が強風と雪に揺れていますというお知らせが届きました、美しい写真と共に。フェイスブックでのことです。ちょうど仙台に行ってみたいなあと思っていた矢先でした。

仙台駅のシーンが登場する伊坂幸太郎の「アヒルと鴨のコインロッカー」という映画を娘のひとりに勧められてレンタルして観たところ、妙に心惹かれたからなのでした。

伊坂幸太郎の代表作品のひとつ「ゴールデンスランバー」は首相暗殺の濡れ衣をきせられて逃亡するしかない男を描いていますが、その冒頭は仙台市での凱旋パレードです。また「重力ピエロ」で連続放火事件が起こる街も仙台でした。伊坂作品は仙台と切っても切れない関係にあるのですが、それもそのはず、彼は仙台にある大学の法学部で学んでいたのです。

さて彼の作品には、ギャングとか重力とかコインロッカーもそうですが、固い金属を暗示する言葉が多いような気がしました。もしや「庚(かのえ)」が関係しているかなと思いましたら案の定でした。

1971年5月25日のお生まれですので、年・月・日にちの順に辛亥・癸巳・庚戌となります。日干が庚戌(かのえいぬ)、つまり文豪に多くみられる「激剛・魁ごう(かいごう)」の人です。今は「金」である「申(さる)」が廻っていますので日干の「庚(かのえ)」が強められていますが、「庚」が弱くなった時が心配です。また、「庚」の「金」のすぐ近くに、常にポタポタ落ちる水の「癸(みずのと)」がありますので、自分自身である「庚」が錆びることになります。つまり持病が疑われるのですが、きちんとケアしていただき、長きにわたってよい作品を生み出していって欲しいと願います。

日干が「庚(かのえ)」の方には他に、昨年ノーベル賞を受賞された梶田隆章さんがいらっしゃいます。1959年3月9日のお生まれですから、順に己亥・丁卯・寅となります。幼い頃からウルトラマンや鉄腕アトムなどのヒーロー物がお好きだったそうです。男の子は往々にしてヒーロー物か乗り物などが好きなように思いますが、梶田さんはヒーローを生み出した側、たとえば御茶ノ水博士などの方により魅力を感じていた子だったと梶田さんのお母さまがお話されているのをテレビで見ました。

「庚(かのえ)」が世に出て役に立つために必要なのは鍛錬です。金属の鍛錬には「火」が欠かせません。2015年は「乙未」の年でした。梶田さんの命式内にある年の支の「亥」と月の支の「卯」、それに昨年の支の「未」が仲良く合体して「亥卯未」の三合木局(さんごうもっきょく)となり、昨年は「木」のパワーが強かった年でした。

その強力な「木」は月の干の「丁(ひのと)」の「火」を絶え間なく燃やし続けます。つまり社会運である「丁(ひのと)」の「火」の勢いがとても強かったということになり、それはお仕事上での成功と考えられるのです。

梶田さんの風貌はお優しそうで、剛健な「庚(かのえ)」のイメージはありませんね。内面は決してくじけないお強いものをお持ちでも、外に見えるお顔は「丁(ひのと)」の文化的な柔和な雰囲気であるということでもあります。ぐいぐいご自分を全面に出していく強引さも命式からは感じられません。

 

さて今日は「庚(かのえ)」の他の十干との関係・相性がテーマでした。

甲(きのえ):「木」である甲(きのえ)が繁茂している場合は斧である庚(かのえ)で伐採して整えるのによいのですが、弱い「木」の場合はいっそばっさり切ってもらって「火」の燃料にします。すると、庚(かのえ)の鍛錬や精錬になるので役に立ちます。

乙(きのと):お花である乙(きのと)と庚(かのえ)では力関係に差がありすぎます。乙(きのと)は常にびくびくしなければなりません。緊張を強いられる存在といえます。

丙(ひのえ):鉱物である庚(かのえ)は、太陽である丙(ひのえ)からの影響はないと考えられます。寒い時期の生まれで命式全体が凍っている場合は、太陽の熱が温めて働きをよくしてくれます。暑い時期の生まれで命式全体が熱い場合は、熱さ倍増でよくありません。

丁(ひのと):鉱物である庚(かのえ)にとって最も大切な存在です。世に出るためには鍛錬される必要があるからです。

戊(つちのえ):固い「土」の中の庚(かのえ)の鉱物は土砂崩れの原因ともなるので、甲(きのえ)が共にあって山を支える必要があります。そうすると「甲・戊・庚」の強力なパワーが素晴らしい働きをして、それを「地下三奇(ちかさんき)」と呼び、職位を重ねて持ち多忙であると捉えます。

己(つちのと):「土生金(どしょうきん)」で畑の土は「金」を生みますが、居心地の良すぎる「土」は「金」を甘やかすことにもなり、「火」の鍛錬を阻むようではかえって残念な存在であるといえます。

庚(かのえ):固い金属が争うかたちとなり互いを傷つけることになるのでよいとはいえません。

辛(かのと):固い金属である庚(かのえ)がデリケートな宝石である辛(かのと)を傷つけてしまいます。

壬(みずのえ):清らかな水である壬(みずのえ)により鉱石の庚(かのえ)が洗われて美しくなります。

癸(みずのと):金属にポタポタ落ちる雨水は、金属の錆びを招きますので有難くない存在です。

 

庚(かのえ)のイメージは如何でしょうか。「剛」「強」「固」などの言葉を今日は多く用いて肩が凝った感じがいたします。男性的でめげない強さを感じさせるこの庚(かのえ)が命式に3つ並ぶ方がいらっしゃいます。

誰あろう、歌舞伎界の女形を代表する坂東玉三郎です。女性よりも女性らしい所作と身のこなしを持つとも言われる玉三郎さんの三柱は年・月・日にちの順に庚寅・庚辰・庚寅となります。これはきわめて特殊な命式です。

実際に歌舞伎を拝見しましたが、その姿は実に艶やかで上品な色気が漂っています。「美」の極致といってもよいような方ですが、命式も特殊です。世に認められ活躍されていながら精神的にはつらいものを感じていらっしゃるかもしれません。ダイバーとして海に潜るご趣味をお持ちですが、海の中はリラックスできるのかもしれませんね。また肉体も鍛えていらっしゃるようです。重いお着物をまとっての舞台は体力勝負ともいえるのでしょうね。

明日は宝石の辛(かのと)についてお話させていただきます。本日もお読みいただきましてありがとうございました。